アラビア語の挨拶

2013-07-05

 

「アッサーラーム アレイクム」、「あなたに、平安あれ」と訳されるこのアラビア語表現は中東一円で共通に使われる最もポピュラーな挨拶です。どこでも、だれにでも使える便利さがあります。構造を説明すると、「安全な状態」を示す名詞「Salam」に、定冠詞「AL」を加えることで「アッサラーム」と発音し、続く「アライクム」は、「on」に相当する前置詞に「you」を示す接尾代名詞が加えられたものだという解説となります。

イスラーム教徒に共通でもあるので、実はアラビア語が話されないイスラム諸国でも使えるオールマイティな挨拶です。

サラーム・アレイクム以外には、朝夕の会話に、「おはよう」や「こんばんは」という挨拶表現があり、各々「サバーハ・ル・ヘール」、「マサー・ル・ヘール」と表わされます。訳せばまさしく、「Good Morning」「Good Evening」。しかし、「Good」を意味する「ヘール(Kheir)」がもつ口蓋音「Kh」音を正確に発声することは日本人には難しいので、先ずは万能な挨拶表現「アッサーラーム アレイクム」を使うことがお勧めです。

アラビア語を習い始めると、「アッサーラーム アレイクム」と挨拶されたら、語順を入れ替えて「アレイクム アッサラーム」と返礼することを教わるのですが、同じ「アッサラーム・アレイクム」と返礼してもかまいません。もし、相手が初対面ではない場合には、挨拶の後、「ケーファ・ハーラック?(How are you?)」と近況を尋ねるのが一般的ですが、これに対して、相手は「ハムド・リッ・ラーハ」と応えます。日本語の「おかげさまで」の意味になります。もし、これが、オマーン人同志の挨拶であれば、引き続いて、「おまえの村に水はあるか?」とか、中東らしい時候の挨拶が、まるで「お返しのお返し」のごとく際限なく続くのです。

一方、「サラーム」という名詞は、固有名詞で高い頻度で使われています。例えば、「平安の家」を意味する、タンザニアの首都「ダール・エッサラーム」もそうです。過去、繁栄を誇った「バグダッド」も往時はそう呼称されていたようです。

アラビア語は、一定の概念を示す3子音の組み合わせをもって構成されている言語です。稀に4子音、5子音の組み合わせもありますが、語根に接辞を加えたり、規則的な母音パターンで使うことで派生語が作られているのです。このような構造は、アラビア語が属するセム語族言語にほぼ共通なものです。「サラーム」とは、「S・L・M」という語根に、「SA+LAA+M」というように母音が付加されたものですが、「イスラーム(ISLAM)」についても、語根も「S・L・M」に「I」と「AA」が加えられているのです。

実は、聖書で使われている古代ヘブライ語や、現代のユダヤ人の現在ヘブライ語も、同様に、セム語族に属する言語です。ユダヤ社会で使われる挨拶は、「シャローム」が一般的に使われますが、実は、セム語で本来「SH」だった音の一部が、アラビア語では、SH音からS音に変化しているのですので、「サラーム」も「シャローム」も同じ仲間の単語と理解すればいいということになります。

なお、今では233号を数えるオマーン日本人会報も「サラーム」です。オマーン日本人補習授業校のWeb (http://www.geocities.jp/omanhoshuko/) からアクセスできます

林 幹雄

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