「イスラムを学ぼう」の講演会が開かれました

2018-06-07

 

2018年5月31日、東京広尾のオマーン大使館において、本年度第2回講演会が開催されました。

講師には東京国際大学特命教授・同大国際交流研究所所長で前筑波大学副学長の塩尻和子教授をお迎えし、「イスラームを学ぼう」をテーマにお話をしていただきました。多数の出席者が聴講に訪れる盛況の中、講演は行われました。

講演の前に参考資料[イスラーム理解のために] [イスラームの基礎知識] が配られましたが、その内容の豊富さに圧倒されます。限られた時間の中でこれだけのお話ができるのか?という心配をよそに、教授は淡々とお話を始められました。

内容は主に、イスラム教に対する日本人の誤解・偏見について。気候の厳しいところでは一神教のような厳しい宗教が生まれ、気候の穏やかなところでは多神教が生まれるのか?一神教は戦争ばかりしている宗教であり、一方多神教は穏やかな宗教なのか?イスラム教は戒律が厳しくて自由がないのか?女性が差別されているのではないか?こうした素朴な、それでいて、ある程度宗教や文化についてわかっているつもりの人でも何となく信じてしまいそうな考え方について、教授は一つ一つ例を挙げてその誤りを指摘していきます。

確かにイスラム教は砂漠で生まれたが、多神教であるヒンドゥー教の生まれたインドも非常に気候の厳しいところであり、気候だけが影響を与えるわけではない。中東でもイスラム教が広まる以前には多神教が信仰されていた。

また一神教は戦争ばかりしているのか?それでは多神教は戦争をしないのか?といえば、戦前の日本はどうなのか?そしてイスラム教世界に戦争が頻発するようになったのはそう古い時代からではない。

確かにイスラム教の戒律には厳しいものもあるが、仏教にも厳しい戒律はある。以前はイスラム教の戒律はそう厳密ではなかったが、インターネットの普及に伴い、サウジアラビア流の厳しい戒律が広まってきている。

まとめとして、イスラム教もまた他の宗教と同様に多様であり、その一部を取り上げて全体を判断するのは間違っている。そのような考え方を是正するには対話が重要で、長楽寺の峯岸正典師や成願寺の小林貢人師らはその先駆として他宗教との対話を行なっているなど、丁寧に説明されました。

これに加え、サウジアラビアのマッカ巡礼のお話や、教授が訪れたチュニジアのモスクの様子、コーヒーの起源や千夜一夜物語などのお話も交え、1時間半という短い時間の中でも広範囲に渡った充実した講演となりました。

教授のお話は、穏やかな語り口の中にイスラム教への愛が深く込められており、聴く者はその熱に打たれるような思いのする素晴らしい講演会でした。